”人とつながり、笑顔をつくる”

澤医院 医療ソーシャルワーカー

府川ふかわ なぎさ

出身: 福岡県
活動拠点:江田島市内
趣味:食べること
好きな言葉:みんなちがって みんないい
好きな食べ物:おいしいものなら何でも
江田島のここが好き:個性的な人が多いところ
今、気になる人: 田口麻耶さん

 

  • 医療ソーシャルワーカー:患者さんやその家族の方々の抱える悩みごとの解決を支援しています。
  • 星空映画会(江田島担当):夏休み期間に学校のグラウンドで映画鑑賞会を開催しています。

  • 医療や福祉を主軸に、おいしいものを食べながら顔の見えるお付き合いができる地域の拠り所をつくりたい

  • 島で暮らすことと島の医療や福祉をおつなぎできます。

  • 今あるつながりを大事にしていきたい
  • 子どもが活躍する場をつくる人とつながりたい

 

後藤記者の取材後記
(取材日:2018年7月23日(月))

 

地域密着型の医療ソーシャルワーカー

府川さんの勤める澤医院はなんと今の院長が11代目。かつては馬に乗って往診していたこともあったという。そんな地域密着型の医院で唯一の医療ソーシャルワーカーである府川さんは、患者さんやその家族の悩みごとを受け止め、療養中の心理的・社会的・経済的問題の解決や入退院・社会復帰の援助などに取り組んでいる。そんな幅広い仕事を、医師・看護師・理学療法士・介護支援専門員等々、院内外を問わず、様々な人材と連携することで患者さんたちを支えているというから驚きだ。まさに「医療・福祉界のコンサルタント」的な役割だと思った。
「地域密着型の医院だからいろんなことをすべてやらないといけない。でもそれが自分に合っている。」
「今日何が起こるかわからない、難しいけどとても楽しい!!」
職員間での申し送りや面談などはもちろんあるが、それ以上に予想もしないことが日々起こるという。患者さんやその家族、院内の職員、院外の関係者等々、特別な状況にある人たちと円滑にコミュニケーションをとることが求められる。
「例えば内線一本で済むかもしれないことも、できるだけ直接顔を合わせて伝えることを心がけています。」
そんな話を屈託のない笑顔でしてくれる府川さんに懐の深さを感じた。

 

患者さんとお話をする府川さん。
院外の関係者とも連絡をとることも多い。

 

子どもと一緒に認知症カフェ

澤医院では、昨年度から病室の一部を開放して「オレンジカフェ(認知症カフェ)」を開設している。このオレンジカフェを発案・運営しているのも府川さん。入院・外来を問わず認知症の方の拠り所として親しまれている。
オレンジカフェのオープン時間が近づくと、おじいちゃんおばあちゃんたちが集まってきて、わいわいと世間話や冗談を交わす。この日は10人ほどの参加者が集まった。常連さんもいれば初めて来たという人もいる。お菓子とお茶を楽しみながらしばらく歓談したあとで、365日のマーチを流しながらみんなで体操をする。なんといっても、このオレンジカフェがおもしろいのは、子どもたちが一緒に参加し、コーヒー・お茶・お菓子を準備して参加者に給仕するなど、カフェ運営のお手伝いをしていること。この日は、府川さんの娘さん(じゅなちゃん)のほかに、5歳くらいの男の子と女の子の3人がお手伝いをしていた。じゅなちゃんが率先してお菓子を作ったりお茶を淹れたりしながら、男の子や女の子もその様子を見て手伝う。おじいちゃんおばあちゃんたちにとっては子どもたちとのコミュニケーションも楽しむことができ、子どもたちにとっては家や学校ではできない経験をしながら、自分たちもお菓子とジュースを味わうことができる。土曜日の午前中、窓から心地よい風が入ってくる部屋で、笑顔の絶えないなんとも和やかな時間だった。

オレンジカフェの様子。
子どもたちが参加者にお茶やお菓子を配る。

4年目を迎える星空映画会

年に一度、府川さんは夏休みの夜に学校のグラウンドで映画鑑賞を楽しむ「星空映画会」を開催している。星空映画会は、呉市のNPO法人「(特)呉こどもNPOセンターYYY」(以下、YYY)が主催している企画で、夏休み期間に呉市内各所で開催されている。もともと江田島市で子育てサークルをしていた府川さんが、広島県の催しを通じてYYY代表の山本さんと知り合ったことがきっかけとなり、江田島市でも開催することとなった。
「1回参加してくれた人が『よかったよ~』と言って、また翌年も来てくれる。人と人のつながりを実感できるのでとてもやりがいがある。」
開催にあたって苦労も大きいに違いないが、府川さんはとても前向きだ。
今年で4年目を迎える江田島市での星空映画会。今年の上映作品は「忍たま乱太郎(実写版)」。府川さん曰く、子どもたちはもちろん、豪華キャストなので大人も楽しめる作品とのこと。しかも今年は豪雨災害もあったことから、少しでも多くの子どもたちの元気になればということで無料開催される。
夜の学校グラウンドという特別な空間で映画を観るという経験を通じて、より多くの人々の心を癒し記憶に残ることだろう。

 

星空映画会@江田島市
星空の下、学校のグラウンドで巨大スクリーンの映画を楽しめる。(写真提供:府川渚)

おいしいものを囲んでつながる地域の拠り所を

府川さんの仕事や活動には共通していることがある。それは「人とつながり、笑顔をつくる」ということ。医療ソーシャルワーカー、オレンジカフェ、星空映画会、そのほかにも書ききれないほどいろんな活動をしている。そんな府川さんに将来どんなことをやりたいか尋ねたところ「おいしいものを食べながら顔の見えるお付き合いができる地域の拠り所をつくりたい。」という答えが返ってきた。とても府川さんらしい。仕事でも地域活動でも顔の見える付き合いを大事にし、子どもからお年寄りまで、すべての世代と関わって、みんなが笑顔になれる場をつくっている。また、「顔の見えるお付き合い」という表現にはこだわりもある。背伸びをせず、自分のできる範囲で、地域の人たちが顔の見える関係を築ける居場所であることが大事だという。そんな居場所があれば近所に住んでみたいと思った。ぜひぜひ実現してほしい。

 

家族への感謝

多くの仕事や活動に携わっている府川さんは2児の母。家の仕事も大忙しである中、どうやってバランスをとっているのだろうか。そこには、家族が府川さんの活動に理解を示し、一緒に手伝ってくれているというカラクリがあった。オレンジカフェでは子どもたちがお菓子作りやお茶の給仕を手伝ってくれ、星空映画会では実行委員に家族が加わって一緒に企画を進める。
いろんな役割がある中で、「子どもにしてあげられることは何か」を考えたとき、仕事や活動の場を子どもと一緒に経験すればよいのでは?と考えた。子どもNGの場面があれば、子連れで参加できる場をつくる。医療・福祉関係者と自主的に開催している子連れで参加OKの事例検討会はその一つだ。
こういった機会は子どもたちにとってもよい経験になっている。星空映画会で宣伝カーに乗ったことがきっかけとなり放送委員になったり、学級会で司会を務め大人顔負けの進行ぶりを見せるなど、親の背中を見て学ぶことは多いようだ。
「1人でつくるより、みんなでつくる方が楽しい。本当にありがとう。」
家族への大きな感謝を、インタビューの最後に府川さんは語ってくれた。

 

家族ぐるみで参加できる医療・福祉の事例検討会(写真提供:府川渚)
グループワークで事例を学びあう(写真提供:府川渚)

 

人物ストーリー

  • 福岡県出身
  • 高校卒業後、東広島市の大学へ進学。社会福祉分野を学ぶ。
  • 卒業と同時に結婚。
  • 大学卒業後、大学の事務員として就職。
  • 2007年、呉市から江田島市切串に引越し。
  • 老人福祉施設に就職。
  • 介護予防教室などの仕事に携わる。このころから地域のおもしろさに気付き始める。
  • 子育てサークルを立ち上げる。
  • 2015年、澤医院に就職する。
  • 同年、第1回星空映画会開催。以降毎年開催。現在に至る。

 

連絡先

江田島人物図鑑 編集局
Email:etajimajinbutsu@gmail.com
澤医院HP:https://etajima-sawa-clinic.com/
星空映画会HP:https://hoshizoraeigakai.jimdofree.com/

 

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