“島生まれ島育ち”

産業観光

有限会社 前水産 代表取締役 社長

まえ  龍乃介りゅうのすけ

出身:江田島市能美町
活動拠点:能美町
趣味:魚釣り、読書、サックス
好きな言葉:話せば実はみんな熱い
好きな食べ物:スイカ、湯豆腐
江田島のここが好き:江田島のどこにでも想い出がある、熱い人がいっぱいいる
今、気になる人:江田島を盛り上げようとしている僕の同級生

 

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  • 海産物や水産加工品の卸・販売
    (いりこ、ちりめん、乾燥なまこ等)
  • 無添加石鹸の製造・販売

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  • 閑散期の冬の時期にできる仕事を作りたい
  • 大学で学んだ養殖の知識を使って何かしたい

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  • 漁の間は新鮮な魚をお届けできます。

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  • 若い人

 

小林記者の取材後記
(取材日:2019年2月15日(水))

 

若者の力で島を元気に

「江田島を盛り上げたいんです。」

そう話す彼の第一印象は真面目そうなおとなしい青年。けれど、話を聞いていくほどにその内に秘められた情熱があふれていました。そんな若者。取材させていただいた2019年、2月で27歳になったばかりという前さんの話を聞いているとこれからの江田島市がますます楽しみになってきます。

 

祖父の代から続くイワシ漁

三人兄弟の長男として江田島市能美町鹿川で生まれ、島で育った前さん。高校は船通学で広島市内に通いました。元々家業である前水産を継ぐことを念頭に下関水産大学校へ。水産大学を卒業し家業を手伝うため戻ってきた年、水産高校を出た弟さんも前水産へ入社。

その夏、尊敬する先代、実父があまりにも早い死を迎えてしまいます。そこから、前さんの社長としての修業が始まりました。仕事もまだ入ったばかり、うまくできない、でも社長。悩むこともあるし、わからないことだらけ。そんな前さんを頼もしい従業員、仲間たちが親身になってくれ助けてくれたと前さんは語ります。

「みんなにすごい支えてもらって社長やってます。」

漁に出る船に乗り込みベテランの漁師の皆さんの教えを受ける。それでも、社長として前水産という大船の舵を取る。そんな駆け出し社長として若さと仲間の力を助けに進んで行っています。

 

イワシ漁の漁期は6月から翌年2月。だいたい6月から年末まで前水産ではイワシあみ漁に出ているといいます。
朝は夜明け前どころか、草木も寝静まる2時3時頃に出港。漁場をまわってイワシの群れを探します。ポイントを見定めて5時に網を下ろして漁がスタート。
調子がいい日はどんどんあがり早々にその日の漁を終えられる日もあるけれど、魚が見つからない日はひたすら探し回り時間ばかり過ぎていくことも。やみくもに探すのではなく頼りになるのは「仲間」たちの情報だといいます。「仲間」でありライバル、江田島や呉、同じ海を漁場にする同業他社からもらう生きた情報。人と人のつながり、助け合いが仕事に生きてくるというのです。

 

いりこ、ちりめん、かえり 前水産の看板商品

 

漁のない1月~5月末までの時期には、先代が始めた乾燥なまこ、乾燥牡蠣の加工があります。いりこやちりめんの乾燥設備を利用しての海産物加工。取材をした2月は乾燥なまこの時期で、加工場には江田島産の大きななまこが次々と運ばれてきていました。

仕入れしたなまこから内蔵を出して洗い、大鍋で煮込み、乾燥。乾燥なまこは中国では高級食材として珍重されます。

大きな釜で茹でられたなまこ

 

なまこの想いを受け継いで

先代は乾燥なまこ加工の際に出る煮汁の薬効成分に注目。あかぎれやしもやけにも効く、漢方薬として使われることもあるという「なまこ汁」。島の恵みの詰まった瀬戸内石鹸「なまこの想い」を開発しました。さらに捨てられる牡蠣の殻に注目して開発した、牡蠣殻スクラブ入り瀬戸内石鹸「渚の誓い」も開発しています。

この「なまこの想い」ですが昨年ぐらいから江田島市内のあちこちで目にすることも多くなり私の身の回りでも話題になりました。元々開発されたのは先代のお父様、残された遺産のひとつだったこの石鹸を「置いてくれませんか?」と江田島市内の事業者を回られた前さん。なまこの煮汁、牡蠣の殻、加工工程で出るそれらを捨ててしまうという資源の無駄を見過ごせなかった想い、前さんが大切にしたかったのは「尊敬できる人だった。真面目で面白い人だった」というお父さんの「想い」だったのかもしれません。この石鹸、2019年江田島市商工会の江田島ブランド認定品にも前水産の他商品と共に選ばれて新しい江田島市特産品になりました。
実際に利用しましたが洗顔すると確かに頬がしっとりもっちりと洗い上がります。なまこの「ぬめぬめ」で美容効果バッチリ!

 

瀬戸内石鹸

 

この「なまこの想い」「渚の誓い」石鹸のパッケージと「前水乃風」という会社ロゴは「湘南乃風」のパッケージデザインもされている広島の書家「翠蘭」さんのものです。
伝統を大切に、時代に敏感に、前水産の風を吹かせていく。
そんな前水産の商品はインターネットか工場直売(要予約)でお求めいただけます。

 

前水の新しい風

引き継いだいくつもの大切な事業。それを守り育てながら、前さんは新しい風を起こし始めています。
「水産業は若い人いないと言われますけど、うちは多いかな。」
船に乗っている人にも若い人が結構いると言います。前さん自身が20代。島を出ていく同級生もいれば残る同級生もいる。その、残る仲間を盛り上げていきたい。江田島で仕事ができる場所になりたい。そういった思いがあり前水産を働きやすい会社にしたいと努力されているということ。今は同級生も4人入ってくれていて一緒に仕事をされているそうです。
働きやすい水産業。取材の日も前さんを訪ねると「わしも取材してえや。」と笑いながら言われていた従業員の方や、事務所で和やかに交わされていた会話。

人と人を繋げる愛される人柄が前さんの持ち味だなと感じます。
この島で生まれこの島で育ち、どこへ行っても想い出のよみがえるこの土地で。
多くの同級生、友達とともに。悩みを分かち合い集まり。
「みんながいてくれる」この場所で、ともに歩んでいく。

前さんと前さんを取り囲む温かい人たちが江田島市に新しい風を吹かせていく、そんな予感がしています。

 

漁が無くても仕事がある 冬場の水槽と前さん

 

(文 小林由佳/写真 小林由佳、後藤峻)

 

人物ストーリー

  • 江田島市能美町出身
  • 高校卒業後、家業を継ぐ事を念頭に下関水産大学へ進学
  • 大学卒業後、島に戻り前水産に入社
  • 入社同年、先代である実父の急死により22歳で社長就任
  • 2019年「なまこの想い」「渚の誓い」が江田島ブランド認定品に

 

連絡先

有限会社 前水産
https://mae-suisan.jp/
Tel:0823-45-5471
Email:tairyou@maesuisan.com

 

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