”町を「家族」にしてくれるお店”

かふェ渚

小松こまつ 一憲かずのり

出身:広島県広島市
活動拠点: 沖美町
趣味:人と話すこと
好きな言葉:感謝
好きな食べ物:卵・肉
江田島のここが好き:自然
今、気になる人:明岳市長さん

小松こまつ 祐子ゆうこ

出身:大阪府大阪市
活動拠点: 沖美町
趣味:スポーツ観戦
好きな言葉:謙虚
好きな食べ物:鶏のから揚げ
江田島のここが好き:空
今、気になる人:イチローさん

  • 「かふェ渚」の運営

  • 島の「情報発信基地」になりたいです

  • イベントをやりたい方に店内スペースをお貸しできます

  • 島の活性化を考えている方とつながりたい

 

峰尾記者の取材後記
(取材日:2018年1月15日(月))

 

ひとが集まり、おしゃべりをする

「なんでもないことで、約束をせずに人と会えるような場が少なくなった」。島に来てから、主にお年寄りから幾度か聞いた話です。「昔は小さな商店があって、八百屋さんや魚屋さんに行けば近所の誰かも来ていたりして、自然と話が広がったんよ。そんな、なんでもないことで人と会えるような場が、気づけばずいぶん少なくなったねえ」。わたしたちの住む江田島市でも、大きなスーパーやコンビニが出店し、かつてあった小さな商店は随分その数が減りました。銭湯や映画館、そして井戸など、かつては町にいくつかあったと聞く公共性のある場も、今ではすっかりなくなってしまいました。そうした場所で、かつてのわたしたちは会い、顔を合わせ、おしゃべりをしてきたのです。家族のことやこどものこと、誰かの誕生や誰かの病気。今日の晩ごはんや、明日の天気のこと。そんな、たわいのない小さな会話の積み重ねが、きっと、わたしたち同士を仲の良い「ご近所さん」にしてくれていました。島に暮すご近所同士を、互いに「家族」と思えるほどに結びつけてくれていた時間。それこそが、そうした「なんでもないおしゃべりの時間」だったのではないかと思うのです。

かふェ渚に行くと、わたしはよく人に会います。もともと顔見知りの人に店内でばったりと会ったり、初めて会う人をマスターたちが自然と引き合わせてくれたり。お店のなかは、いつも、とても開かれた空気で満ちています。「かふェ渚」を思い出すとき、わたしには人の笑顔や明るい空気が浮かびます。それは、マスターのお人柄そのままでもあるかもしれません。アットホームで、常連さんも多いのに、不思議と「入りづらい」雰囲気がないのです。なぜだろう?と思うと、とあることに気づきました。お店を切り盛りするおふたりが、「移住者」の目線を持っていらっしゃるからかもしれません。

 

 

マスター。笑顔がとても印象的です

 

20年ぶりに喫茶店を再オープン

「マスター」 お客さんたちから親しみを込めてそう呼ばれる小松一憲さんは、広島市生まれ。高校在学中に大阪へ移り、そのまま大阪で多彩な仕事を経験してきました。貸衣装の会社で祐子さんと出逢い、結婚。大阪での生活もとても楽しかったと言いますが、高齢になった両親のことが気にかかり、ふるさとである島に帰ってきます。2016年のことでした。

フェリー乗り場のすぐ目の前にある「かふェ渚」。かつて、マスターのお父さんが営んでいたそのお店は、平成8年に閉店していました。閉店から20年が経っていた喫茶店を「再びやろう」と言いだしたのは祐子さん。「単なる喫茶店ではなく、この島の『情報発信基地』になれたら」と、当時の想いを語ってくださいました。大阪市内の下町で生まれ育った祐子さんは、飲食店勤務の経験はありませんでしたが、「もともとコーヒーが好きで、喫茶店にはよく行っていたので、『こんなお店にしたい』というイメージはありました」と言います。喫茶店、休憩場所、船の待合所、雑談場所・・・イメージはどんどんと膨らみ、なかでも大事にしようと思ったのが「ここに来たら島のことが分かるようなお店」だと言います。「パンフレットを置くだけでなく、来てくださった人とおしゃべりをしながら、島のおもしろさを紹介する。そんなお店になれたら」。オープンから1年半、かふェ渚は、祐子さんがイメージされていた通りのお店に成長しています。

 

おふたりの「好きなもの」を集めた一角。「アイテムだけでなく、その向こうに作り手さんの顔が浮かぶ。そんなモノやコトを集めています」とマスター

 

「みんなのリビング」 そんなお店をめざして

「内装を頼んだ業者さんには、『できるだけシンプルにしてください』とお願いしました。いつかお店をやめたときには、うちらで過ごすリビングとして使いたいんです。だからここは、今は、『みんなのリビング』。そんな空間、そんなお店になったらいいなと思っています」。改装にあたり、マスターが大切にされた想いです。「みんなのリビング」 それはまさに、家族が心地よく過ごせる場所。顔を合わせておしゃべりをしたり、ときには静かにコーヒーを啜ったり。そこに集う人たちを、「家族」のように結びつける。そんな、「みんなのリビング」のような場所、お店。近所のひとも、少し遠くに住む人たちも、なんでもないようにそこに集まり、おしゃべりをし、帰って行って、またいつか来る。かふェ渚という小さな箱のなかで、そんな「時間」や「おしゃべり」が、毎日毎日積み重なっています。ある人の「おしゃべり」が別の誰かが欲しかった「情報」になったり、誰かへの小さな「思いやり」や「思い入れ」が、いつしか少しずつ育っていったりします。かふェ渚というお店や空間が、気づけば島のわたしたち同士を、家族のように結びつけてくれています。

 

随所に木を活かした明るい店内。お客さんたちが笑顔でくつろいでいる光景をよく見ます。

地域のひとも、観光客も

朝7時。かふェ渚の営業がはじまると、モーニングを求めてご近所や島内からのお客さんたちがやってきます。無添加のトーストとサラダ、ゆで卵にコーヒー。「近所の皆さんがこんなにお店に来てくださることは、嬉しい想定外でした。うちに来てくださるのは、もっと、移住者や観光の人だけかと思っていましたから」 祐子さんが話します。「お店をやっていると、住んでいるだけだと話さない人と話せたり、違う価値観の人とも話せることがとても楽しいです。先代の渚に来ていたお客さんが来てくださることもあって、嬉しい気持ちになります」。モーニングを楽しむお客さんの波が一息つけば、あっという間にランチの時間。ハンバーグやカレーなど、定食にもしっかりとサラダがついていて、渚のごはんは女性にも人気です。ご飯のおかわりも自由ですから、男性も大満足です。

コーヒーはサイフォン式。注文を受けてから一杯ずつ淹れていきます。飲み物が入れられるカップには、島に工房を持つ陶芸作家さんの作品など、ご夫婦の「好きなもの」が使われています。お店の一角には、おふたりの「好きなもの」を集めたコーナーも。

ひとつひとつ、「ていねいに手がかけられている」 そんなことを感じる渚のメニュー。オープン当初にはメニューになかったお味噌汁(モーニングに追加でオーダーできます)も、お客さん達からの要望で始めました。「『お味噌汁だけは絶対に出しません』 オープン当初はそう思っていたのに、今では美味しい味噌汁づくりに燃えています(笑) とにかくお客さんに『味噌汁がおいしい』と言ってもらいたくて」と祐子さんは笑います。

 

人気のモーニング。野菜たっぷり
渚の常連に祐子さんファンが多いのも納得です

 

凝り固まらず、その時々で変わってゆく

「これからどんなお店になっていきたいですか?」という質問に、おふたりはこんなふうに答えてくださいました。「『誰かに話しに行く場所』になれれば嬉しいです。オープンに生きる、心を開く、そのきっかけのお店になれたら。地元のひとも、移住者も、観光の方もみんなが集まるお店になったら」とマスター。「気がつけば、お店にいつも誰かがいてくださって、お客さん同士がばったり会うこともよくあります。そんな場面を見ていられるのがとても嬉しいです。これからも、そんなお店であれたら」と祐子さん。「凝り固まらずに、その時々に、周りの皆さんに必要と思われるお店になっていきたいですね。ゆっくりとでも、長くお店を続けられるように。体が健全でないと、良い接客はできませんから。まずは、健康に。長生きしなくちゃね」 そう言って目を細めるマスター。横で深く頷く祐子さん。かふェ渚。いいお店です。ほんとうに。

かわいい三角屋根が目印
通常営業の他、店内スペースを使ってイベントも増えています(写真はオリーブオイル講座)

 

人物ストーリー

一憲さん

  • 広島市出身。
  • 高校在学中に大阪へ移る。
  • 卒業後、繊維関係の仕事に従事。
  • 2003年、婚礼貸衣装業で独立。
  • 2016年、江田島市へ戻り、8月に「かふェ渚」オープン

祐子さん

  • 大阪市出身。
  • 高校卒業後、ブライダルコーディネーター業~貸衣装業に従事。
  • 2003年、婚礼貸衣装業で独立。
  • 2014年、小松一憲さんと結婚。
  • 2016年、江田島市へ移住。8月に「かふェ渚」オープン

連絡先

かふェ渚
住所:広島県江田島市沖美町三吉2717
TEL:0823-47-0016
Facebook:かふェ渚

 

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