“ふるさとの自然を知る子どもは、ふるさとを語れる大人になる”


 

江田島市教育委員会 大柿自然環境体験学習交流館(さとうみ科学館) 館長

西原にしはら  直久なおひさ

出身:福岡県北九州市
活動拠点:大柿町深江(江田島市全域の里海)
趣味:格闘技(少林寺拳法など)をする&観る
好きな言葉:冴え
好きな食べ物:スイカ、おでん、コーヒー
江田島のここが好き:変化に富んだ海、個性豊かな人との関わり
今、気になる人:寺脇栄一郎さん

 

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「里海」を教育資源とした江田島市ならではの特色ある教育の推進

<学校教育>

  • 理科教育・環境教育の推進:理科・生活科・総合的な学習の時間などの授業への外部講師、科学研究の指導・助言
  • マリン・アドベンチャー:市内の全小学5年生を対象に里海で生き物観察などを行う体験学習。
  • 教職員研修:理科の先生や市内初任者の研修などの支援。
  • 職場体験:市内中学生のキャリア教育の一環としてさとうみ科学館の職場体験を実施。
  • 教材教具の開発・貸出 など

<社会教育>

  • 自然観察会やサマーキャンプなど、身近な自然に興味関心を持ってもらうための各種イベントを実施。
  • 民泊プログラム:江田島市が取り組んでいる民泊型修学旅行の体験プログラムとして,野外観察やカキの解剖実験,お魚捌き体験などをサポート。
  • 大学の学術研究や学生実習、広島県の生物調査事業などへの協力。
  • 江田島市沿岸における海岸生物(カブトガニ、ハクセンシオマネキなど)の調査研究。 など

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  • 江田島市内の子どもたちとの里海学習をこれからもやっていきたい。
  • 「海辺の学習なら江田島市(さとうみ科学館)へ行ってみれば」と誰もがイメージする、そんな事業展開をしてきたい。

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  • 里海をテーマにした学習・研究・研修など目的や希望に応じてプログラムを組み立ててサポートします。

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  • 江田島市地域おこし協力隊と何か新しいことを一緒にしてみたい。
  • 広島大学総合博物館の清水則雄准教授と連携していきたい。

 

後藤記者の取材後記
(取材日:2017年6月29日(木))

 

冒険心をくすぐる「マリン・アドベンチャー」

「マリン・アドベンチャー」。どこかワクワクする響きを持っているこの名前は、子どものころに憧れた自然界の冒険を思い出させてくれる。
平成23年度から始まったマリン・アドベンチャーは、里海学習推進事業の一環として毎年開催されており、江田島市内の小学5年生全員が経験する。班単位のオリエンテーリング形式で海辺の生き物観察を行い、里海の生き物に触れる体験学習プログラムである。
午前中は室内で海辺の生き物観察のポイントやマリン・アドベンチャーのルールなどのガイダンスが行われる。それから班分け・役割分担を行い、昼食をとっていざフィールドとなる深江釣附海岸へ。
釣附海岸は、里海の特徴である砂浜、干潟、藻場、岩場すべてがそろっている。フィールド内に7つのポイントが設けられており、各ポイント7分の制限時間内に生き物を探し問題に答える。ゲーム感覚で体験できるのもマリン・アドベンチャーの醍醐味だ。子どもたちはポイントに立っている先生にヒントをもらいながら、砂場を掘ったり、岩場の岩をひっくり返したり、藻場のアマモをかき分けたりして、生き物を夢中になって探す。生き物を見つけたときは「おおー!」とか「やったー!」とかところどころ歓声があがる。別々の学校で班を組んでいるため、その日初めて会った子ども同士が力を合わせながらポイントを稼いでいる様子を見ると、里海の学習に加えコミュニケーション力やチームビルディングにもとても良い影響を与える取り組みだなあと感心してしまう。しかもこのプログラムは、子どもたちだけでなく、学校の先生にとっても江田島市の里海を学ぶ良い機会となっている。
マリン・アドベンチャーを始めて7年目。今、最初に体験した子どもたちは高校生だ。
「将来、この子たちが大きくなって、自分の子どもがマリン・アドベンチャーを経験する機会があったときに親子で里海について一緒に話ができると素敵ですよね。」
と西原館長は言う。そんな環境が整っているこの島で自分も子どもを育てたいと改めて感じた。

 

初めて顔を合わせる子もいる中、班分けと役割分担を行う。
マリン・アドベンチャーのフィールドとなる大柿町深江の釣附海岸。砂場、干潟、藻場、岩場がひととおり観察できる。
岩場で生き物を探す子どもたち。西原館長がさりげなくヒントを出す。
最後のポイントでは里海をテーマにした川柳をつくる。
マリン・アドベンチャーの集合写真。

 

廃校を活用した地域密着型の「さとうみ科学館」

全国で廃校を活用している地域は増えてきているが、里海をテーマにした博物館にリニューアルしている事例はここだけではないだろうか。
大柿町の深江小学校は平成12年3月に閉校した。一方、旧大柿町の町制45周年記念事業として平成12年1月から「大柿町海辺の生き物調査団」が発足され、海辺に住む生き物を調べながら市民が自然に親しみ学ぶ活動が実施されていた。2年の期限付きの調査事業は記念誌を作ることで一つの節目を迎えることとなったが、海をテーマにした社会教育・学校教育としてとても有意義な取組であったこと、旧深江小学校という活用可能性のある施設があったことから、平成14年4月に大柿自然環境体験学習交流館(さとうみ科学館)がオープンした。とはいえ、最初から現在のように施設が整っていたわけではない。まさに廃校舎だったところを手作業で荷物を整理し掃除することから始まった。当時から職員として務めてきた館長の説明を聞いていると、自らの手で作り上げてきたこの施設への愛着を強く感じた。
さらに、平成15年度には大古小学校、平成17年度には鹿川小学校が本校舎の改修に伴い、さとうみ科学館を仮設校舎として利用することとなった。毎日子どもに囲まれていたこの期間が、学校教育との結びつきを強くするきっかけになったという。
さとうみ科学館の特徴は地域密着型であること。市内の学校を始め様々な機関や市民とのつながりが強い。例えば、地元の漁師さんがしばしば網にかかった珍しい生き物を持ってきてくれることもあり、中には学術的に貴重なものもあるという。
そんなさとうみ科学館であるが、館が有するコンテンツを今以上に生かしていくために施設のリニューアルが必要だと西原館長は考えている。
「江田島市の自然を知り、学ぶことができる江田島市にしかできない、ここにしかない里海学習の拠点施設が必要」
施設のリニューアルについて西原館長はそんな思いを語ってくれた。

さとうみ科学館の外観。校舎の雰囲気がそのまま残っている。
1階の展示室。身近な海の生き物からカブトガニまで、江田島市の海がぎゅっと詰まったミニ水族館となっている。
理科室だった部屋は実習・講義からお魚捌き体験までできる。
深江小学校最後の児童が一筆ずつ書いた作品も展示してある。

 

サイエンス魂に人との縁が加わった

西原館長の噂は以前からいろんな人から聞いていた。みんな共通して「おもしろい人だよ」と言う。実際に西原館長にいろいろとお話を伺ってみると、お話そのものも面白いのだが、そのバックグラウンドがとても興味深いものだった。
西原館長は、大学院時代から特別研究員としてしばらく務めていた。サイエンスの基礎はこの時期にお世話になっていた恩師から叩き込まれたという。その後の就職については、子どものころからあこがれていた教員を目指し、平成12年2月に高校の非常勤講師の話があった。そのことを恩師に報告しにいったとき、ちょうど一本のメールが恩師のところに届いていた。その内容こそ「大柿町海辺の生き物調査団」の事務局員募集の案内であった。
調査事業の観察会を見学しにいったとき、50人ほどの親子連れが参加している光景を目にした。まさに“生き物の研究”と“人との関わり”の両方を満たせる仕事だと直感した。年齢的にもいろいろとチャレンジできるタイミングだったことから調査団の仕事に就くこととなった。
調査団の団長は大学の恩師に募集のメールを送った当人であった。サイエンスの基礎を大学の恩師から学んだとすると、調査団長からは学校や地域との連携やイベントの動かし方、報道の使い方までいろいろなことを教わった。また、地域のことについては地域の人から教えてもらった。
西原館長は「江田島市に来ていろいろな人と関ってきた。その分人の魅力にも気づくようになった」と言う。いろんな分野の人たちとの縁から西原館長の「おもしろい人」像がつくられてきたのだと感じた。

 

地元の漁師が持ってきた珍しい生き物について説明する西原館長

 

ふるさとの自然を知る子どもはふるさとを語れる大人になる

西原館長の格言だ。いい言葉だなあとしみじみ思う。マリン・アドベンチャーをはじめ、さとうみ科学館では市内の子どもたちに様々な里海学習の機会を設けている。
実は、取材直後、僕はたまたま江田島市内の中学1年生に授業をする機会をいただいていた。生徒に対して事前に行ったアンケートで、「江田島市のよいところ」という問いに「海の生き物が多様である」という答えがとても多かったことが印象に残っている。里海学習の経験がこんなところにも表れていた。
自然に触れることで、自分たちの生まれ育ったふるさとの特徴をより深く知ることとなる。そのことを誇りに感じてくれれば、将来島にいてもそうでなくても、周囲の人や次の世代にふるさとのことを語ってくれる。長い目で見たときに西原館長の活動は島にとって大きな財産になると確信した。
「ふるさとの自然を知る子どもはふるさとを語れる大人になる」
島の子どもたちに島の魅力を伝えられる大人になろうと僕自身も意識させられる言葉だった。

ふるさとの自然を学び中の子どもたち
江田島市の里海がぎゅっと詰まった釣附海岸の鳥瞰

 

人物ストーリー

  • 福岡県生まれ広島育ち
  • 小学生のころ、両親の地元広島に転入。
  • 高校卒業後、広島大学に進学。大学時代には、ウニの採取のため何度か江田島市を訪れている。
  • 大学院卒業後も特別研究員として淡水プランクトンの研究に務める。
  • 平成12年4月、研究室の恩師に送られてきたメールをきっかけに、大柿町海辺の調査団の事務局員として就任。朝も夜も地域の人と関わりながらいろんなことを学ぶ。
  • 平成14年4月、さとうみ科学館オープン。スタッフとして従事。
  • 平成16年11月、江田島市誕生とともにさとうみ科学館館長となり、「里海」を教育資源とした江田島市ならではの特色ある教育の推進に力を注ぐ。

 

連絡先

江田島市教育委員会 大柿自然環境体験学習交流館(さとうみ科学館)
住所:江田島市大柿町深江1073番地1
TEL:0823-57-2613
FAX:0823-40-3100
e-mail:satoumimail@yahoo.co.jp

 

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